平成20年度 沖縄イノベーション創出事業の採択決定交付式が6月2日に沖縄産業支援センターで開催されました。
沖縄県では、本県における産学官共同研究を支援するため沖縄イノベーション創出事業を実施しており、先進的な研究開発に取り組む中小企業やベンチャー企業、大学などとの共同研究を対象に、最大5,000万円を助成しています。
今年度は、新規に顕在化ステージ7件、事業化ステージ5件の研究プロジェクトが採択されました。
研究プロジェクト名一覧
顕在化ステージ
・泡盛の酒質制御システムに関する研究
泡盛の酒質には、原料処理、製麹、発酵工程、蒸留など酒造りの全工程が影響を与えていると考えられ様々な観点からの研究が期待されているが、従来は、主に麹菌や酵母の改良といった研究が行われており、蒸留装置や蒸留操作が酒質に与える影響については未だ不明な点が多い。このため本研究では、蒸留装置の構造と蒸留操作が酒質に与える影響について研究し、酒質を任意に調整することが可能な自動蒸留技術の確立を目指すものである。
・高硬度シリコンウェハホルダ開発のための金属材料の焼入処理技術の研究
ICチップ等の半導体製造の初期工程において、ICの 原版となるシリコンウェハを研磨する。
この工程で使用するウェハホルダという研磨用治具において安定した研磨を持続させるために耐摩耗性の向上が期待されている。
本研究では、耐摩耗性の向上のために金属材料に硬さや粘り等の性質を付加する“焼入れ”という方法を用い、最適な材料の種類、形状、大きさ、処理量などの条件を探索すると共に、金属板の厚さの維持、治具の形状や治具に付加すべき機能についても検討する。
・プロテインホスファターゼの生産と利用開発
プロテインホスファターゼは生体内のタンパク質脱リン酸化に関与し、その中でもセリン・スレオニン残基を特異的に脱リン酸化するプロテインセリン/スレオニンホスファターゼ(PP)は、多くの生体反応の制御機構として重要な役割を果たしている。
これらの制御機構を解明するためにはPPの機能や役割及び構造の研究が不可欠である。そのため、生化学試薬として良質で信頼性の高いPPの供給が求められている。
本研究においては、遺伝子工学的手法を用い、従来にない安価で、高品質のPPを生産し供給するための研究を行う。
・サイクロデキストラン(CI)を原料とする細菌捕捉多価糖ポリアミンの開発
多価糖鎖は、細菌、ウィルス、毒素などを捕捉する機能を有するため、抗菌フィルターや感染病の検査キットの材料として期待されている。
しかし、これまでの多価糖鎖は高分子を基材として開発されてきており、その不均一性とコスト面で問題となっていた。
そこで本研究では、砂糖由来でその環状構造から多価糖の基材として非常に優れた性質を有しているサイクロデキストラン(CI)を用い、均一性が高く、コストが安い細菌捕捉材料を構築することを目指す。
・小型トラクター装着型の往復連続刈り可能な高稼働サトウキビ刈倒機の研究開発
サトウキビ産業は、沖縄の基幹産業として重要な地位を占めており、これまでにサトウキビ収穫にかかる機械化のため、外国製の大型ハーベスタの導入など様々な対策が施されてきた。
しかしながら、沖縄の気候や、土地、農家の規模にマッチしておらず、期待する結果が得られていない。そのため本研究では、軽量で高稼働な沖縄の環境にマッチしたサトウキビ収穫機械を開発することを目指す。
・製紙スラッジを用いた高機能性多孔質体の開発と住環境改善資材への応用
製紙スラッジは県内製紙製造業者において年間約4000トン発生するにも関わらず、最終処分場への処理も困難となっており、処理・再利用技術の確立が急務となっている。
本研究共同体においては、これまで、製紙スラッジを原料とした多孔質材を試作し、これに無機塩を担持することで高い調湿効果が得られることを確認している。
今後、用途に応じた多孔度形成のための炭化と、化学修飾による多様な化学特性の付加に関する研究開発を実施し、二次成型加工を行うことで、安価で機能性の高い住環境用多孔質材の開発を目指す。
・沖縄における種苗知財戦略を核とした重イオンビーム照射による亜熱帯農作物の新品種育成と種苗生産
植物育種分野において、重イオンビーム(重粒子線)照射では、従来のX線やγ線に比べ、変異スペクトルの幅が拡大し、新規な遺伝子が出現しやすいと云われており新しい育種法として注目を集めている。本研究では、地球温暖化を視野に入れ、重イオンビーム照射による熱帯・亜熱帯作物の効率的な品種育成システムを開発することを目的にしている。
事業化ステージ
・採血不要な新規体質判定技術を応用した健康支援サービス事業開発
採血せずに個人の遺伝体質や代謝状態を短期間で判定し、未病状態の判定とそれに基づく健康指導を組み合わせた健康指導ビジネスの事業開発を行う。
将来スポーツクラブやリゾートホテル、スパ・エステなど、どこでも簡便に健康チェックと体質体調に基づいた健康管理が可能となる。
メタボ対策のみならず様々なサービスと組合せることで、健康保養型観光分野での裾野の広い高品位な健康支援サービスを新規に確立することが期待される。
・効率的な育種システムによるイネ新品種の開発および事業化
コシヒカリは極良食味品種だが、一方、長稈で倒れやすく、いもち病に弱いため、農薬を散布することが多い。また、収量や食味の面から栽培適地が限られている。
そこで、植物ゲノムセンターではゲノム育種法という育種選抜技術によって、①いもち病抵抗性短稈コシヒカリと②コシヒカリ出穂期改変系統を育成中である。①はいもち病に強く、また倒れ難い。この実用化により、安全・安心なコメのニーズに応えることができる。②は従来のコシヒカリに比較して出穂が早いものから晩いものまで6種ある。
実用化すればコシヒカリの栽培適地が南北に拡大する。沖縄向きコシヒカリも期待できる。
・半導体ライン状X線検出器の開発
CdTeとASIC の組み合わせによる検出器の開発を推進し、CdTeピッチサイズの小型化(0.4mm角)とASICの低雑音、高速信号処理を実現する技術を確立する。
X線検出器として、サンプリング速度が高速な読み出し回路の開発を主体に、低ノイズのアナログ回路を有し、CdTe検出器からのアナログ信号をデジタル化するミックスドシグナルの信号処理機能を持った読出回路(ASIC)の開発を行うことにより、これまでエネルギー弁別が困難であったX線におけるフォトンの検出を実現し、非破壊検査の技術および異物検出精度を向上させる。
・ペプチドライブラリーを用いるがん細胞標的治療薬と検査法の開発
ハイペップ研究所は分子認識を産業に応用する研究を行ってきた。
沖縄は肺がんの罹患率が高く、肺がんは早期発見が困難で発見時には悪化している例が多い。また、汎用抗がん剤は各種がんに対し包括的に作用するため副作用が多い。
当該プロジェクトでは肺がんを標的に独自の技術ノウハウを駆使し、ガン細胞認識ペプチドを探索し、早期診断法とミサイル的治療薬とを開発する。沖縄発の制がんイノベーション創出が期待できる。
・野菜害虫を防除する沖縄産天敵昆虫コミドリチビトビカスミカメの商品化
コミドリチビトビカスミカメは、化学農薬に代わって主要農業害虫を駆除することができる環境に対して安全な天敵昆虫である。
昨年度の顕在化ステージにおいて、天敵生物農薬として商品化可能と判断された本天敵昆虫の商品化を実行する。国内で天敵昆虫を生物農薬として製造販売するには国の認可が必要であるため、本年度は、商品化に向けた具体的手続きである、委託効果試験・実践的利用技術の確立・食害範囲の確認に関する研究を行い、3年後の認可取得・販売開始を目処に、商品化を実現する。