8月18日のコラムから、「広くて強い商標権」について御説明してきた。
そして、前回のコラムでは、やっと商品についての具体的な話をすることができた。
今回は、商標について、具体的な話をしてみたい。
前回は、商標権という権利については、「商品」と「商標」の2方向から考える必要があると御説明した。
このうちの「商標」とは、「登録商標」を意味する。
少し難しい話をすると、登録商標とは、商標登録を受けている商標をいう(商標法2条5項)。
これだけ見ると、登録商標と言ったり、商標登録と言ったり、一体何が何なのか、よく分からないという方がほとんどだと思う。
簡単に言うと、登録されている商標のことなのだが、では、「登録されている商標」とは一体何か。
権利が発生すれば、その権利の商標が、まさに「登録されている商標」なのだが、これを正確に理解している人は非常に少ない。
今日のコラムは、ここが一番重要なところなので、きちんと説明したいのだが、ある程度、商標法という法律を知っていないと理解ができないかもしれない。。。と、言い訳をしたくなるくらい、簡単には理解しにくいところなので、興味がある方は、ぜひ相談に来てほしい。
出願の手続(商標登録出願)をしたことがある方は御存知だと思うが、「願書」といわれる書類には、必要事項を書き込まなければならない。
ちなみに、インターネット出願ソフトを使ってオンラインで出願する人は、必要事項を入力したデータを作成することになる。
この必要事項の1つに、【商標登録を受けようとする商標】の項目がある。
この項目に書き込んだもの、或いは、入力したものが、権利が発生した際に、「商標登録を受けている商標」になり、「登録商標」になる。
ここまでは分かって頂けると思うが、では、その「登録商標」の範囲(権利範囲)は、一体どこまでの範囲を言うのか。
この点、商標法27条1項には、「登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない」と規定されている。
ということは、「登録商標」の範囲というのは、「願書に記載した商標」、つまり、【商標登録を受けようとする商標】に書き込んだ商標、或いは、入力した商標、を基準として判断されることになる。
そうすると、何を基準に判断すれば良いかは分かったと思う。
ところが、この基準自体を正確に理解できていない人が非常に多い。
というのは、商標は、文字でも図形でも、平面でも立体でも、彩色があっても無くても、登録を受けることはできるのだが、これらがあたかも違う権利であるかのように誤解している人がいる。
例えば、匂いや味、音は、日本の商標法では商標として認められていないが、商標は【商標登録を受けようとする商標】に書き込んだ商標、或いは、入力した商標を基準として、その範囲が決められるのだから、文字でも図形でも、平面でも立体でも、彩色があっても無くても、その基準に違いはない。
制度上は、立体商標、標準文字など、特殊な制度はあるが、その範囲を確定するにあたって基準となるのは、いずれも【商標登録を受けようとする商標】になる。
くどいようだが、基準は同じなのだ。
では何が違うかと言うと、【商標登録を受けようとする商標】に書き込んだもの、或いは入力したものが違うのだ。
例えば、同じ「アイウエオ」という文字だけの商標でも、文字の構成や書体に違いがあったり色彩が異なったり、願書に書き込まれた状態を観察すると、いろいろな違いがあるはずなのだ。
この違いこそが、基準となる「登録商標」(=【商標登録を受けようとする商標】)の権利範囲に影響を与える要素なのだ。
そして、この違いが明確に分かるような特殊な商標であればあるほど、審査においては、登録の可能性を高める反面、権利が発生した後は、他の商標との類似性を否定される可能性が高くなる。
つまり、できるだけシンプルな、特殊性がない商標の方が、たくさんの商標に類似すると判断される可能性が高く、広い範囲で権利を行使できる可能性が高くなるのだ。
いろんな余計な要素が盛り込まれた商標というのは、それが特殊であればあるほど、その商標の特徴と捉えられるので、審査においては登録しやすくなるのだが、その反面、権利行使のときには、その特殊な要素が差異点として評価され、類似性を否定されやすくなるのだ。
例えば、私が勤務する「えるだ法律特許事務所」は、弁護士がいる「(法律)事務所」であり、弁理士がいる「(特許)事務所」である、という意味で「法律特許事務所」にしているのだが、これはどこにでもある、業種を表す一般的な事務所名だから、他の事務所と違う名称であることを表す部分と言えば「えるだ」の部分になる。
そうすると、一番シンプルな商標はといえば「えるだ」だけになる。
この文字をロゴマーク化したら特徴は出るが、それは審査の上ではメリットはあるが、広く権利行使したければ、あまり余計な要素は盛り込まない方がいい。
もちろん、本来的な商標ということから考えれば、「えるだ法律特許事務所」が商標なのだが、敢えて「えるだ」だけにした方が、広い権利範囲を確保できる可能性が高いのだ。
もちろん、類似性の判断には、こんな簡単な話で済むものではなくて、もっといろんなことを考慮して検討する必要があるのだが、みなさんが今後、商標権を取得する際の一助となれば幸いである。
弁理士 大久保秀人
えるだ法律特許事務所
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